Time after teime

いらっしゃいませ

今にも雪が降りそうで

今にも雪が降りそうで

薄い灰色の空を見上げながら、
雪が降ったら
肩に落ちた白い結晶を払うのを口実に
隣の平次に触れられるのにと
しょうもないことを考えてる。


「東京は、雪が積もったんやって!」
「あ?」
「ほら、蘭ちゃんから写メが来たん!」
東京の、白一面の雪景色が映った携帯電話の画面を平次の方に向けながら、いつもより少しだけトーンの高い声で話しかける、2月下旬の朝の通学路。

「うわぁ見とるだけで寒なってくるわ」
平次はポケットに手を突っ込んで、「雪なん降らんくてもええ」なんて言うから、「そうやな」って、
アタシの願いは口には出せず宙ぶらりん。


もしアタシらが恋人同士やったら、
雪を払うのを口実になんてしなくたって、今すぐに
ポケットの中のその手を引っ張り出して、自分の手を重ねるのに。

平次が「気色悪い」って言うたとしても、「ええやん」って離さずに
きっと素直に可愛く言えるのに。

あぁ また、しょうもないこと、考えてしまったな。


「平次、雪降ったら、今日の体育なくなるかな」
「あー?雪くらいでなくなるか。吹雪やったらわからんけど」
「今日マラソンやんー。吹雪になってくれへんかな」
「オイオイ勘弁してくれや」


もし、吹雪になったら、
横からの雪を避けるフリをして、
平次の斜め後ろ、背中のへんにおでこを寄せて、くっついていくのにな。

 

今にも雪が降りそうで

薄い灰色の空を見上げながら、
雪が降ったら
「雪や」って言葉で誤魔化しながら
「好きや」って言うてしまうのにと
そんなことも考えてみる。

 

…さっきからアタシは、
もし、もし、もし…って
どれもこれも、勇気さえあったら、
雪なんかを理由にせんくても、出来ることばかりやのに。
…ただの幼馴染やから、なんてことも、
わかりきった逃げの言い訳で。


こんな、出来ないことばかりなアタシの上に
きっと雪は降らないな。
この冬は、もう………。


「あー、けど、今にも降ってきそうやな」
「え?」
「マラソン中止になるくらいの吹雪にはならんやろうけど」
「…降るかな?」
「さぁ」

空と平次の横顔を、交互に見つめるアタシに
平次は笑いながら話しかける。


「今日たぶん部活はよ終わるで」
「あ、うん。いつもんところで待ってるよ」

いつもみたく、朝の通学路で、一緒に帰る約束をする。
にやけてしまいそうな顔を隠しながら、
雪、降ったらいいな
って、小さなことを願うん。

 

―さっき思ってみた台詞、言うてみようかな。
出来れば、「雪や」なんて誤魔化したりせずに。

もしも小さな願いが叶って
帰りに、雪が降ったら。

 

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ふと思いついて30分くらいで書いたので、色々おかしいかもしれません^_^;
こんな、なんてことないじれじれしたお話もたまには書きたくなります。
2015/02/22 UP

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