Time after teime

いらっしゃいませ

サヨナラ片想い

「で?おめーらは、いつくっつくんだよ?」


工藤くんが帰ってきた。
蘭ちゃんのところに。
ほんで、二人想いが通じて、めちゃ幸せそうな蘭ちゃんの横顔を眺めながら、アタシはほんまに感動してしまって、
よかったなよかったな、って、隣におる平次と喜んどったん。

工藤くんがこっちを見て、なんの戸惑いもなくアタシらに言うた。
アタシらはどうなん?やって。

えらい爆弾落としてきよるな。


その瞬間、平次が急に慌て出して言うたん。
「こんなうるさい女と、ありえへんわ」
「オレのタイプはこんなんとちゃう」
とかなんとか。
こんなこと、確か前もあったな。

つられてアタシも言うたったわ。
「アタシらがどうこうなることなんかないて!」
「平次は弟みたいなもんやで!」

アタシの気持ちを全部知っとる蘭ちゃんは、ちょっと呆れたような、心配したような顔でアタシらを見よる。

あぁアタシらほんま成長せんね。


蘭ちゃんはええな。
工藤くんから想われてるの、こっちにも伝わるで。
ただの幼馴染みから恋人同士になったんやね。
ほんまに、よかったなぁ。
ずっと待っとったもんな。
会われへんくてもずっとずっと…。


アタシと平次は、会われへんことなんかなかったけど、ずっと近くにおったけど、
ダメやわ…
この先もきっと、ただの幼馴染みのままなんや。
アタシの片想いは、終わらへんのや。

 

「和葉、オレたち帰ろか」
色々考えると悶々とするけど、今から大阪の自宅まで二人きりや。
嬉しいようなちょっと気まずいような。

けどアタシらはずっとこうしてきた。

 


駅のホーム。
まだ、新幹線がくるまで時間があるみたいや。
二人に気をきかせて、ちょっと早く出てきたんやろか?

平次はなんもしゃべらん。
なんとなく空気が重い気がする。

 


「なぁ平次
アタシ、そんなにありえへんか?」

重い空気をさらに重くしよ思うたわけやないけど、なんでか、自然に言葉がでてしまった。

「なんや?」

「せ、せやから…工藤くんたちみたいな…
アタシが平次の彼女になるとか、
絶対無理なん…?」


あかん、平次固まっとる。
言うたらいかんかったかな、こないなこと。

せやけど…
もう今しかない思うたんよ。


「…付き合うたら、なにするんや?」
「え?」

「オレらいつも一緒におるやん
なんか変わるんか?」

平次が真剣な顔して聞きよる。


そうやな…
付き合ったらなんか変わるんかな?
アタシもそれは…ようわからんのやけど。


「付き合わな、できひんこともあるんやないの?」
「なんやそれ」


…しまった。
沈黙になってしもた。
アタシなにを言うん。
なんやねん、付き合わなできひんことって。


平次、またしゃべらへんやん。
どないしようこの空気。
アタシのアホ。

 

て、思うてたら、

 


「えっ」

ふいうちや。
奪われた。

 

え?

 

なんなん?

え?え?
なんで?

駅のホームやで。
いっぱい人いてるで。


いやそれ以前に、や。

アタシらこういうことする関係やないやん。
アンタがありえへん言うた。

ありえへんやないの?
ありえるんか?


なんでや。

 

なんでキスしたん。

 

「…こういうことやな」

ちょっと…なに、ひとりで納得しとるん!


「平次…ただの幼馴染みはこんなことせんよ…」

思いきって言葉にしてみた。
なんて返ってくるやろか?

こんなことして、
それでもまだ、お前はありえへんて言う?

 

「ただの幼馴染みなんかやないわ」
「え?」

「お前のことはずっと大事に思うとるよ。特別なん。
好きとか嫌いとか…そんな簡単な話やないんや」

普段言わへんようなこと言うとるから照れてるんやろか、
平次下向いとるで顔がよく見えへんわ。

「平次…」

アタシが声かけると、下向いとった顔を上げて、アタシの瞳を見て言うた。


「幼馴染みでも恋人でもなんでもええ。
ずっとそばにおったらええねん。

そばにおってほしいんや、オレが」

「ほんまに?ほんまにこれからもアンタのそばにおってもええの?」

「今さらやて。そう言うてるやん。」

「ずっと?」

「ずっとや」

「ほんまにずっと?」

「しつこいなぁ。ほんまや。ずっとや。」


これは、現実なんやろか…?
ほんまは夢やったとか、そんなだったらどないしよ。


「アタシも、幼馴染みでもきょうだいでも恋人でもなんでもええ。
平次のそばにいれるならそれでええよ」


平次が、えらい優しい顔で笑っとる。
アタシはその顔を見とったら、悲しくないのに泣きそうになった。
そうや、嬉しくても泣けるんや。


「お前が好き」って、はっきり言われたわけやない。
けど、いちばん言うて欲しいこと言うてくれた。

アンタが叶えてくれたんは、
アタシの、一番の願いなんよ。

 

「けど平次…幼馴染みやきょうだいやったらキスはせぇへんよ」
「ほんならチューする幼馴染みてことにしとこか?」
「そこは恋人でええんちゃう!」

相変わらずやね、アタシらの関係は。
でも確実に、きのうまでとは違う。


「そうやな…
まぁとにかく、和葉はオレの女やいうことや」


今日でさよなら、や。

アタシの、長い長い片想い。

 

++++++++++

この2人には付き合おうが付き合わまいがずっとずっと一緒にいて、
喧嘩して仲良くなってまた喧嘩してラブラブしてって繰り返して、
それでそのまま結婚して欲しいって思います。

2013/08

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