Time after teime

いらっしゃいませ

和葉姉ちゃんがお嫁に行く日

「平次!平次!!起きとるんか!!」

朝からオカンの声はうるさいねん
起きとるわ!! ちゅーか寝られへんかったんやけど


「平次!起きとるんならはよ支度せぇ!今日は大事な日なんやから」


そうや、今日は大事な日や
オレやのうてアイツの…


…親父もオカンも朝からそわそわしとる

「なぁこん着物ちょっと派手やないかな?
あんまり私が目立ってもいかんしなぁ」
「そない派手なことないやろ」
「そう?じゃあええか
けどほんま残念やわ こん日は私も花婿の母として迎えるつもりでおったのに」
「まぁ しゃーないな…こんバカ息子やで」
「ほんまやな アホやな平次は」

「なんやねんさっきからバカやのアホやのうるさいんじゃ!!」


「…静華 いちばんつらいんは平次かもしれへんぞ…」
「せやな ちょっと言い過ぎたかな…

平次 はよぅ行ったり ゆっくり話せるの今日で最後かもしれへんよ
今日くらいは優しい言葉かけてあげるんやで

和葉ちゃん お嫁に行ってまうんやから」

 

…そう 今日は小っさい頃からオレのそばずーーっとくっついとった和葉が嫁に行くゆう日や
なんや社会人になって知りおうたどこぞの年上の男と結婚するゆうて報告受けたんが数か月前


「ほんまはきっとあんたに止めて欲しかったんやで」

今さらオカンがなに言うてもどうにもならんわ


「オレ、先行くで」


式場のホテルまでの道のりを、オレは重い足取りで歩く

正直あいつの顔なんか見とうない
けどオカンの言うように今日が最後かもしれん
オレがおめでとう言わへんかったらあいつはきっと悲しむやろし
オレかて最後に言わんといかんことあるやろ? 
おめでとうのほかにも 大事なこと


そんなこと考えながら辿り着いた控室
オレは重い扉を開けた


「平次!遅いやん!まさか寝坊したとちゃうやろな?」


目の前に座っとるんは…小さいころから知っとる女や
白いドレス着て完璧に化粧もして なんやいつもと違うけど
オレを呼ぶ声も笑うた顔も 
全部オレの知っとる和葉や


「遅いて…まだ式まで時間あるやろ」
「せやけど 平次と話したかってん」
「なんでや」
「なぁどうや? アタシ
なんや照れるなー こないなドレスとか似合わん気がしとってん」


「キレイや」


「へ?
い…いややわぁ そないなセリフ似合わん男やわ
平次もスーツバシッと決めてかっこええなぁ」


せやかて
オレやないんやろ
お前の隣並ぶんは 別の男なんやで
褒められても 全然嬉しないわ

 


「和葉ちゃーん!ごめんね遅くなって!」
「蘭ちゃん!工藤くん!」


その瞬間、入ってきたのは…工藤や
なんや…久しぶりに会うた気がするわ

「うわ~和葉ちゃんキレイ!! ねぇ新一!」
「あぁ」
「服部くん 久しぶり」
「お…おぉ 姉ちゃんも元気そうやな」

「蘭ちゃんごめんなぁ 遠いところわざわざ」
「全然! 和葉ちゃんの花嫁姿、見たかったんだもん」


「おい服部大丈夫か?」
「は? なにがや 工藤」

「相手がオメーじゃねーからよ 来るのも気がひけたんだけど
蘭がどうしても行きたいって言うから…」
「あぁ…お前らも来月やもんな結婚式
そら姉ちゃんも見たいわな」
「服部…」


なんや工藤がオレの顔見て言葉詰まらせとるわ
オレそんな変な顔しとるのやろか?

「なぁ蘭 オレたちもう行こうぜ」
「え?もう?」
「…いいから」

「…わかった じゃあ和葉ちゃんまたあとでね!」
「うん ありがとー」


工藤たちが部屋を去って扉を閉める
また、オレと和葉二人きりや
扉の向こうから 二人の会話が聞こえる


「…新一 服部くんと和葉ちゃん二人にしてあげたかったんでしょ」
「あぁ 最後になるだろうしな」


「……」

工藤のあほう 今さら二人きりにされても言葉がでーへんわ
こないなとき気がきいた言葉も見つからへん


「…なぁ平次 こっから駅もあの緑地も見えるんやね」
急に立った和葉が窓の外を眺めて言うた

「あぁ…ほんまやね」
「よういろんなとこ出かけたな あそこで待ち合わせしてバイクの後ろ乗せてもろうて
そうそう高校んときあんたと仲良うしとったコナンくんとも遊びに行ったりして」
「あぁ」
「いろんな事件に巻き込まれて大変やったわ」
「お前がチョロチョロオレのあとくっついて来るからやろ」

「しゃーないやん 平次のそばにおりたかってん」
「…」
「もう…これからは行けへんね」
「…」

 

「なぁ 平次もはよ幸せになり」
「和葉…」

「お姉さん役も今日でおしまいや


けど アタシが平次のこと大好きやったんは 
ずっとずっと変わらへんよ」

 

なに…言うてんねんこの女は
しかも満面の笑み浮かべて
そんな顔は旦那になる男に見せたらいいやろ

なんで今そないなこと言うんや

止めてほしかったんか?

だったらなんでそんときそう言わへんのや
ほんまにアホな女や…


「平次?」


…ちゃうねん
アホは…オレや

 

「和葉…し…しあ…幸…せ…に」
「なんや?聞こえへんけど」

 

あかん 言葉が出てきーひん
幸せになれって それ言うために今日ここに来たんと違うんか?


「平次?顔色悪ない?大丈夫か?」
「…なんもない」
「けど…」


「うるさいんじゃ!! ボケェ!!
嫁にでもどこでもとっとと行ってまえ!!」


「平次!?」

 

オレは思い切り扉を開けて外に出た
晴れの日の和葉に怒鳴りつけて
ほんまサイテーな男や


「服部!?どうしたんだよ」
「工藤…」
「服部くんどこ行くの? もうすぐ式始まるよ」


「……
オレ やっぱり出られへんわ」


「へ?」
「工藤と姉ちゃん あいつのこと見届けてやってや 悪いな」
「ちょ…服部くん!?」
「蘭! いいから」
「でも…」

 


式場を抜け出して全力で走る
このへんの道は全部 和葉と一緒に通った場所や

 


今までオレはなにしとったんや
探偵やゆうてえらそうに事件解いてきたくせに
いっちゃん大事なもんなくしてしもた

 

なんでや ずっと近くにおったのに
なんで気づかへんかったんや
遅すぎるわ
ほんまに…オレは…

 


「和葉――――――――!!!!!」

 

 

 

 

+++++

 


「平次? 平次大丈夫か?」


なんや?
大声で叫んで気ぃ失って 気づいたら目の前におるんは…


和葉や


「あれ…ここどこや」
「なに寝ぼけとるん? 新幹線の中や
今から蘭ちゃんやコナンくんたちみんなで大阪遊びに行くところやん」
「あぁ…今朝まで東京やったな…」


やっと我に返った
今のは全部…… 

 


夢   やったんか     

 

 

「平次昨日遅くまで事件やゆうて起きてたから 爆睡しとったよ
時々へんな寝言言うてたけど」
「寝言? 言うてたか?オレ」

「嫁にでもどこでも行ってしまえーーって
大きい声やったよ なんや焦っとったし
どないな夢見ててん?」


「和葉姉ちゃんがお嫁に行っちゃう日の夢でも見てたんじゃない?」

オレらの会話を聞いとった工藤が嬉しそうな顔でそう言うた

「え?」
「おい、くど…やのうてこんガキ!うるさい!!」


「アタシがどこお嫁に行くいうのー
平次18んなったらもろてくれるんか?」


え?


「アホか!
お前みたいなうるさい女誰が嫁にするか!!」
「なんやのんそれ アタシかてもっと優しゅうしてくれる人んとこ行きたいわ!」
「そないなこと言うなや!!!」
「は!?」

 

「…あ…せやから
じゅ…18でってのは早いかな はは…」
「どういう意味やの?それ…」


なんや…工藤も姉ちゃんもみんな…
にやにやしてこっち見とるわ


オレはなんちゅーこと言うんや


けどまぁ ええか
照れとる和葉の顔見たら なんやかわええなって
ちょっと 思てしもたから

 


「なーなー蘭ちゃんはお嫁さんゆうたらやっぱり白いドレス着たい思う?」
「え…そ、そうだね…白いドレス憧れるな」
「蘭ねえちゃん…きっと似合うよ」
なに照れとるんや 工藤のアホが


「でも和葉ちゃんは和装も似合いそうだよね
白無垢とか(服部くんも絶対和装のが似合うだろうしね)」
「も~蘭ちゃんなに言うん~ 想像してまうやん!」

 

「和葉はドレス姿もイケてたで」

「え~?なにそれいつ見たんよ?」
「あ…や だから…」

 

オレが言葉に詰まると工藤がオレの顔見てまたにやにやしよる

「やっぱり平次兄ちゃん和葉姉ちゃんの夢見てたんだね」

 

++++++++++

生まれてはじめて書いた二次小説です。
文章って難しいな、ってあらためて思いました。

2013/07/23

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