Time after teime

いらっしゃいませ

「オレの~」につづく先の言葉は

誤魔化すことなくはぐらかすことなくアタシのことを
「オレの女や」って、堂々と紹介してくれるようになったんは
恋が叶ってどれくらい経ってからやったかな。


昔はよく、「平次のお姉さん役や」なんて、偉そうに言うてたな。
そう言うてれば、平次のそばにいられると思ってたん。
平次が無茶しすぎんように、って理由つけてたくせに、守られてたのはいつやってアタシのほうだった気がする。
せやからときに、平次のほうから「妹分」なんて言われたこともあったんかな。

考えてみれば平次が弟やったら、なんてあんまピンとこーへんな。
弟って、もっと、可愛げある存在なんじゃないかって
きょうだいのいないアタシは想像してた。

 

「お二人は、幼なじみなんですよね?すごい縁ですねぇ!」
「まー、くされ縁いうやつですわ。…なぁ?
って、和葉、お前話聞いとるんか?」
「…え?」

昔を思い出して浸るとうわの空になる。
平次に肩ぽん、てされてハッと気付く。

「え?やなくて。
オレようわからんで、お前がちゃんとこの姉ちゃんの話聞いとけや!」
「あ、うん、せやな…。で…」
「今、席次表に載せるお二人のプロフィールの確認を…」
「あ、あぁ、せやね、ごめんなさい。そう、幼なじみです、くされ縁です」

貴重な休みにめんどくさいなぁ、しゃあないなぁ、と、
うだうだと乗り気ではない平次を強引に連れて来た式場の打ち合わせ。
出会いから今までを教えてください、お互いなんて呼び合ってるんですか、
誰もが受けるやろう形式ばった質問の答えを探して、過去の自分らに思いを馳せていた。

なんて呼び合ってるか、なんて、別にアタシらはずっと普通に「平次」と「和葉」で
でもその固有名詞を呼び合うアタシらの関係は、その存在を変えながら今日まできた。
そういうことを、思い出してた。


「すごいですよね。
たまに学生時代からお付き合いされてるカップルの方もみえますが、幼い頃からいうのはもう…、
ほんまにこの人しかいないんだな、って運命そのものいうか…。
なんか、感動してしまって…あ、すみません」
「プランナーさんが仕事でいちいち感動しとってどないするん、
アタシら別にそんな、感動的な出会いもしてへんし、
ただ親同士が結んでくれた縁が今まで続いとっただけゆうか…」
「せやから、それが、すごいことなんですよ!」


言葉にすればたいしたことなく聞こえるけれど
確かに、この縁の力は最強かもしれへん。

当たり前のように隣にいてる平次の横顔を見ながらそう思う。
そこにいるのは、もちろん、弟でも、お兄ちゃんでもなく
ただの幼なじみでもなくて―…


「ずっと家族みたいやったもんが、ほんまの家族になる言うことやな」
そんなに特別なことでもない、と言うような口調で、特別なことを言う。
平次らしくない言葉。けど平次が『家族』言うと、その言葉が重みを増す。

 

「恋人同士やなくなるのは、少し寂しくないですか?」
この質問は打ち合わせとは関係ないんですが、と前置きして、目の前の彼女が微笑みながら尋ねる。

アタシと平次は、生まれたときからずっと一緒に生きてきた。
お姉さん役やと照れ隠しして、子分やと誤魔化されて、妹分みたいなもんやとはぐらかされて
「オレの女」やって、堂々と紹介してくれるようになったんは
恋が叶ってどれくらい経ってからやった?


恋人同士やなくなるんは…
そうやな、少し、寂しいかな。
けど―…

「同じ名字になれるんは、嬉しいです。なぁ、平次?」
「あ、あぁ…」
「もうー、こんな場所まで来て今さら照れることないやん!」
「照れてへんわ、ボケ!」
「顔赤いで!」
「赤ないわ、人の顔ジロジロ見んなや」
「なによそれー!」
「仲いいですね」

「こちらまで幸せになれます」って言われて、にやにや、アタシの頬はゆるみっぱなし。
平次は黒い顔を少し赤く染めたまま、そっぽ向いて黙ってしまった。


ほんまの家族になれるんは、嬉しいよ。
子分や、妹分やと、そんな苦しい意地張られてたことも今ではなつかしい。
アタシのことこれからは
「オレの嫁さんや」って、平次、言うてくれるんやろ。
そんな平次を想像すると
アタシは最高に幸せな気持ちになれるん。


++++++++++

「オレの奥さん」より「オレの嫁さん」って言って欲しいです。
もちろん、「オレの和葉」がいちばんいいなぁ(*^_^*)
アニメかまいたち観て考えました。
あーだこーだとはぐらかしてたこともきっといつかはいい思い出に…v

2016/02/22 UP

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