Time after teime

いらっしゃいませ

You Love…I Love

「なぁ平次―、まだ解けへんのー?」
「ちょお待てって。もうすぐやねん」
「つまらんわ~。ちゃちゃっと解いて構ってやー」
 
工藤くんからの挑戦ゆう、なにやら難しそうな暗号を片手に、
さっきから難しそうな顔して無言の平次。
そんな平次の背中に、アタシは自分の背中をぴたっとくっつけてもたれかかる。
邪魔したらあかんな、とはわかってるんやけど、
時々わざと首を傾けたり動いて頭コツン、てしてみたり、
だって、ちょっとは、気にして欲しいな、って…。
 
「…おい」
「なに?」
「しっぽ」
「ん?」
「さっきからしっぽの先が首にちょろちょろ当たってこしょばいんやけど」
「わざとやもん」
「集中できんわ。もたれとってもええから動くなや」
「…わかった」
 
もたれとるんは、ええんや…。
平次の言葉に素直に従って、できるだけしっぽが揺れんように、
じっと、体重だけを後ろにかける。
とりあえず重い、とは言われへんから、このままでええかな……。

集中してる平次の顔を見たい気もするけど、
平次の顔見るんは、解けた瞬間のお楽しみにしとこか。


「こうして背中を合わせてると、思い出すな、監禁されたこと」
「あー…嫌なこと思い出させんな」
「平次あんとき、絶対絶命やったもんな」
「お前もや」
「そっか。一緒に殺されるかもしれんかったな」
「そういうことをいちいち覚えとらんで、はよ忘れろや」
「忘れるわけないやん…」
 
平次と一緒に経験したことは、全部、覚えとるよ。
どれだけ年を重ねても、きっと思い出す。
 
 
あの頃はまだ、簡単に触れられる関係やなかったな。
だから背中を合わせてただけでやたらドキドキしとったん。
「友達」やなんて、 1 度も思ったことはなかったけど、
平次はアタシのこと「友達」以上には思ってくれてなかったよな…?
 
アタシはあの頃から、なにか、変わったんかな。
きっと変わったところもあれば、変わってないところもあるん。
変わらないものの方が多いかな、平次も、アタシも。
平次の背中にもたれて安心するんも、やっぱり変わらへんから―…。


「解けた」
「え?」
「解けたで、暗号。なんやこれ、わかってしまえば単純すぎるわ」
「なんやったん?事件?」
「いや、工藤が、『お前に解けるか』ってメールで送りつけてきたん。
事件でもなんでもない」
「ふーん。事件やないのに、平次キラキラしとるな」
「キラキラ?なんやそれ」
「あ、こっちの話や、気にせんといてー」
「なんやねん」
 
少年みたいに瞳を輝かせて
得意げに
そんな、表情も
アタシが大好きなキラキラは、やっぱりずっと、変わらない。
 

 
そうやな、変わったことゆうたら―…。
 
「で?なんやった?
やらしいことしたいって?」
「えっ、なに!?
そないなこと言うてへんよ!?」
「構ってやー、言うとったやん」
「構って、って別にそういうことちゃうし…」
「まぁ、ええやん。こっち来いや」
 
背中合わせから、くるっと向きを変えて向かい合ってたところに
手招きされて、拒否する理由なんてもちろんなくて、
すっぽり、平次の腕ん中。
 
「アタシ別にこのままでも十分やで」
「…えらい生殺し状態やな」
「ちゅーくらいならしてもええよ」
…恥ずかしいこと言うてしまったかな、ってちょっとだけ後悔してたら、
「そんなん余計しんどいわ」
平次はそう言って苦笑い。

さっき、当たるとこしょばい言うてたしっぽの先っぽを指でくるくる巻きながら
時々腕が首や頬に触れるのに、
肝心なところは触れるか触れないかの距離を保って数分。

焦らされて、上目使いでちょっと不満そうなアタシに気づき、
ニヤリと笑いながら、
「ちゅーくらいならしてもええで」
って、仕返しのつもりなん。

ちゅーだけで終わらんくせに…。


悔しいなって思いつつ、アタシは、
小さな声でひとこと呟いて
顔を上げて軽く唇を重ねた。


Kiss して Hug して
「好きやで」って素直に言える。
それがいちばん、あの頃と変わったことかな。

 

++++++++++

私はしっぽフェチな平次がとても好きなんだと思います。
私も和葉ちゃんのしっぽの先っぽを指でくるくる巻いて遊びたいけど、
平次にそれをやってもらうのがいちばん理想です(∩´∀`∩)

『KissHug』  ♪aiko より 
『ゆらゆら~』だと思って歌ってた歌詞が
『YouLove YouLove…』でした(*^^*)

 

この曲いいなーなんかお話書きたいなーって思ってから1年くらい経ちました。
引用した箇所なんて
『友達だなんて一度も~』のところと
『まだ知らないことだらけの背中と背中を合わせて~』
のところくらいですけど^_^;
 
2015/05/29 UP

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