Time after teime

いらっしゃいませ

たとえば、こんな、しあわせ。

*恋人つなぎ


「なぁ平次、手、繋ぎたいんやけど…」
「なんでや」
「え…っ」
なんで?
理由がいるんか?手を繋ぐんに…。

そんなことを言われたから、
自分からはすぐ隣の平次の左手に触れるんが
難しく思えてきてしまったん。

行き場をなくした右手をさりげなく
ポケットん中、ひっこめようかと思った瞬間…
手を掴まれてドキッとした。

右横少し上に目線を向けると
平次は何もなかったように真顔。

「平次、なんで…」
「あ?なんや」
「…なんもない…」

言いかけた言葉を飲み込んだ。
―なんで、指、絡ませたん?

今までとは、やっぱり、どこか違うな。
…恋人同士になって最初のデート。

 

*夜が明けたら


真夜中に目が覚めた。
真横の平次は瞼を閉じて、まだまだ夢ん中。

お互い照れくさくて
眠るときはそっぽ向き合ってたはずやのに
今なぜかアタシは、平次の腕を枕にして
お互い目を覚ませば目が合う位置に。

目の前の平次に
ちゅーしちゃおうかな…
一瞬思ったけど、やめた。

寝てるときにしてもつまらんし、
平次が覚えてへんちゅーなんてなんとなく寂しい。

夜が明けて 朝が来たら
平次が目を覚ましたら
ふいうちで、してみようかな。

平次、怒るかもしれへんけど。

 

*名前を呼ばれて


「服部さん」

ソファの真上の窓からの日差しが
なんだか心地よくって、うとうと…
夢と現実の間をうろうろしてた。

小さい頃から何度も耳にしてきた
愛しい人の名前が呼ばれたんに反応して
ガクン、と横の肩にもたれかかって、

「…平次、呼ばれてるよ…?」

寝ぼけた声でそう言うと、平次は、
ジト目でこっちを睨んで呆れ顔。

「アホか。お前や」
「え…?」
「なんでここでオレが呼ばれるねん。
お前に付き添って来とんのやで」
「あ…」

そうや、アタシ、なにを言うてんのやろ。

高校時代のな、夢を見とったんよ。
まだ、想いさえ伝えられなかった幼いアタシ。
まだ、遠山和葉だった頃。

「平次も一緒に診察室入るやろ?そのために来たんやん」
「あー…あぁそうやな…」
「初めてやから、パパ、おめでとう、って言われるんやで」
「パパってなんやねん。気色悪いな」
「ええやんかー」
確かに、『パパ』ってあんま、似合わへん気もするかな…。

「服部さんー」
「あ、ほらはよ行かな!…はいっ!」

平次、『パパ』って、まだちょっとしっくりこないけど
アタシの『服部』はどうやろか。

名字変わって、1年くらい経つのにな。

『服部さん』言われて、『はい』って答えるんは
やっぱりまだちょっとくすぐったいな。

 

*My Little Lover


腕の中で眠る、小さな寝顔をずっと見ていた。
ずっと、見てると…なつかしい気持ちになるん。

「…お前、どっちが好きやねん」

隣の隣で眠る平次が、突然小声で問いかける。

「…どっちって?何と何?」
「せやから、オレと、こいつや」

小さな寝顔に目を向ける。

「え? 何言うてんの?」
真剣なんか、冗談なんか、…アタシのほうは、
にやけてしまう顔を隠せない。

全部が、平次にそっくりなんよ。
大事で大事で、愛しくて、
ずっと側にいて欲しいって、
そう願う気持ちも平次に対してのそれとおんなじ。

…いつかは、離れていってしまうんやけど。

「どっち、ゆうこともないけどな―…
平次は旦那さんやけど、この子は…恋人、ってところかな」
「…なんやそれ」

どっちが好きか、なんて、意味ないこと聞かんといてや。
腕の中で眠る小さな恋人は、
大好きな人との愛の証よ。

 

 

++++++++++

たまには子どもが男の子バージョンもいいかな、と思いました。

2015/05/10 UP

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