Time after teime

いらっしゃいませ

愛してる…

「あ、雪…」

キラキラのイルミネーション、行き交う人、人。
クリスマスソングなんかも流れて、
加えて、ちらちらと舞い降りる白い結晶。
出来すぎた情景なのに、なんでか、アタシだけ一人。


さっきから目に映るんは、肩を寄せ合う幸せな恋人達ばっかりで、
その景色がやけに幸せそうで、
コートの、ふわふわのファーの襟をそっと立てた。
せっかく、いつもより着飾ってても、
見てもらえんかったら意味ないやん。
風が吹くたびに、髪が乱れてる気がする

「遅いわー。あのアホ、なにしとるん。
会って真っ先に謝ろう、思っとったのに」
…昨日の喧嘩のことを考えてた。

くだらない原因やったけど、言いすぎてしまったかな。
クリスマスの約束を忘れてたことくらい、たいしたことなかったのに。
事件やったら仕方ないし、
そりゃ、腹は立ったけど、こうして、
夜は待ち合わせできることになったん。

今隣におらんのやな、と思うと…
喧嘩できたきのうがなんだか愛しい。
結局アタシは、平次と、やいやい言い合うそんな時間も、
すごく楽しくて大事なんやな。
一人で平次を待ちながら平次のことを考えてると、
そんなあたりまえのことに気づくだけ。

 

「和葉!悪い、遅くなった…」
「平次…もう、遅いやん!」
突然現れた待ち人は、息を切らしてる。
急いで、走って、きたんやね…。
「せやから、悪いって……」
「うそ。怒ってないよ。こんな日にお疲れ様やね。
無事、解決したん?」
「あ、あぁ…」
「あ、あの…平次、昨日は…」


「和葉」
「平次?」
昨日のこと、謝らなあかんな、って言葉にした瞬間、
抱き寄せられて、平次の腕の中。

「息、白いな」
「だって雪、降ってるやん…」
「そら、寒いわな」
「って、平次、いきなりどないしてん?恥ずかしいやん」
「ええやん。周りこんなんばっかやで」

確かに、あっちでもこっちでも、
あまーい雰囲気の恋人たちばっかりやけど…。


そっか、アタシらも、今ではこんな風に、
甘いクリスマスを過ごせる関係なんやな。
実感すると、照れくさくて、嬉しい。

平次がこんなことするのは、全然、
柄じゃない気がするけどな。


「寒いから、あったかいところ行こうや。
平次はなに食べたい?」
「…ちゅーか、店、予約してるけど」
「えっ!」
「なんやねん」
「へ、平次がそんなことするん…。居酒屋とかか?」
「レストランや。なんやその失礼な言い方は!
キャンセルすんで」
「ご、ごめんごめん。あまりに似合わな過ぎて…」
「あ?」

いや、だって、クリスマスのこと忘れとったやん。
やっぱり、柄じゃないよ。柄やないから…
余計に嬉しいわ。

 

「平次」
名前を呼んで、今度はアタシから抱きついて、


「―――。」

小さな声で、ひとこと。

「なんや?聞こえんかったけど」
「もう、言わへんもーん」
「気になるやろ」


いつか、もっと大きな声で言うからな。
そう、きっと、来年のクリスマスには…。

小さな声で、でもほんとのほんとの気持ち。
今一番、平次に言いたかった気持ち。

 

『愛してる』 って、言うたんよ。

 

++++++++++

メリークリスマス☆
2014年恋人クリスマスです。

小松未歩さんの『愛してる…』より。

短いうえになんてことないお話で…><。
幼馴染だろうが恋人同士だろうが、夫婦になってからはもちろん
平次と和葉には自然な感じで一緒に過ごしてて欲しいですねv
ありがとうございました(*^_^*)

2014/12/25 UP

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