Time after teime

いらっしゃいませ

初夜*新婚編*

「あー…」
「なに?」
「いや、もう、ゴムせんでもええんやなって思って」
「そう…やね…。お母ちゃんも平次んとこのオバチャンも、はよ孫見たい言うてたし。
けど、まだ早いような…もうちょっと2人きりでおりたい気もするな」
「新婚一発目で、いきなり出来るもんなんか」
「さぁ…そういう人もいてるし…って、一発目とか言わんでや!」
「他に言い方ないやん」


平次の名字に変わって初めて過ごす夜、真新しい匂いのするシーツの上で交わす会話は、
相変わらず、ロマンチックさの欠片もないんやけど、
これから一緒に歩む未来の話やと思ったら優しい気持ちになる。

 


あぁ今日は、ほんまに幸せな1日やったな。
みんな笑ってたし、平次も笑ってたし、
アタシは少し、泣いてしまったけど、
それも、幸福の証。

 


「平次、工藤くんたちの結婚式のとき、工藤くんニヤニヤしっぱなしでアホみたいやった、言うてたけど…。
今日蘭ちゃんに言われたよ。服部くん、ずっと嬉しそうに笑ってるねって」
「はぁ!?工藤のねーちゃん何を言うてんねん!
オレはこの先、お前の尻に敷かれる人生の始まりかと思ったらえらいせつなくなってきて、それを隠すんに必死やったん」
「はは。なんやそれ。尻に敷いて欲しいん?」
「…なんや、いつもみたいに怒らへんのか」
「やって、全部、照れ隠しなんかな、って思ったら、怒る気になんかならへんよ」
「はぁ!?照れ隠しちゃうわボケ!!」
「へへ」
「うわぁイラつくわー。襲うで」
「この状況で言うことか?アンタもアホやな」


「いい加減黙れや」そう言うて、キスで口を塞ぐんは、いつものこと。
目を閉じると今までの、出逢った頃からの日々が浮かんできそうやけど
いつの間にか、そんなことすら考えられなくなってしまう。


「ん………」


「口、閉じとんな」
「なんかな、…恥ずかしいんよ…」
「なんでやねん。今さら」
平次が苦笑いしてる。でも、顔も声もすごく優しい。

 


平次の名字に変わって初めて過ごす夜、平次の顔見るのも平次に顔見られるのも、妙に照れくさい。
こんなこと、今までだって数え切れないくらいしてきたのに。


ただ名字が変わっただけで、なにも、変わってなんてないのにな。
平次を好きな気持ちも平次と一緒にいたい気持ちも、なにも変わらず昔のまま。


「平次、アタシ、今日はすごく幸せやから、このままアンタの腕の中で寝てもいいかな、って思うんやけど」
今日1日の、幸せな時間を思い出して浸りながら
平次の胸に顔をうずめて、どくどく鼓動を子守唄代わりに眠るんも悪くないかな、なんて
…今まさに行為に及ぼうとする瞬間に言うのは、あかんかったかな?


「オイオイオイ!アホなこと言うなや!このまま寝る!?
初夜やで、初夜!!」
ほら、やっぱり、いつも以上に必死になるん。


「初夜って…アンタが言うとやらしいわ…」
「お前だってその気になっとるやろ」
「ぎゃぁぁぁ!いきなり触らんといて!」
「悲鳴をあげるな!オレ旦那やで」
「…ごめん」


あれ、こんな会話も、初めてのときみたいや。
さっきからなんや、ムードぶち壊しな気するんは、アタシのせいかもしれへんな。
でも、だって、これも、アタシの照れ隠しなんよ。
こんな風に、やいやい言い合うのも、楽しくていいよな。
…なんて余裕はやっぱり与えられず、愛しい時間は始まってた。

 


「平次…痛い……」
「痛い?なんでや」
「…って、言うてみたん。初夜、って感じするやろ」
「………はぁ、ほんまにアホな女やな」
「そのアホな女お嫁さんにしたんは誰やー」


もっと、乱暴にしてくれてもいいのに。
相変わらず、優しく、優しく触れるんやな。
似合わへんねん。


この時間が始まると、もう、なにも考えられないん。
平次を好きって、それしか考えられない。


照れくさくて言えへんけど、アタシの反応を見れば、平次にはきっと全部お見通し。

 


「なぁ平次、赤ちゃん欲しいなぁ」


「…さっき、まだ早い言うてなかったか?」
「やっぱり、欲しい。好きな人との子どもやもん。いっぱい欲しいよ」
「いっぱいって……。まぁ、がんばるわ」
がんばるって、何をどうがんばるんやろ…そんなこと考えてにやけてしまったのも一瞬、
ゆっくり、深く、繋がって、
お互いの身体が重なった。


舌を絡ませ合うのは、息がしづらくて、ちょっと苦しい。
平次が動くたびに、少しの痛みと身体中を支配する心地よさで、ちょっと苦しい。
でも、嬉しいよ。
今日はもう、泣きたくなんかないのに、愛しさがこみ上げて止まらないん。


平次の首に回した手をぎゅっと強めて
ずっと、このまま繋がったままでいたい、離れたくない
なんて思うアタシも、えらいやらしいのかもしれへんな…。
もうこれ以上は、近づくことができないのがちょっとだけ寂しいけど…、
それはめっちゃ、贅沢な悩み。

 


「中に、出すで」
「うん…」
その熱を、直接感じるのも初めてやった。

夫婦に、なったんやな。

実感しながら、こうしてまた、「初めて」をお互い攻略し合う喜びを噛みしめる。

 


こんな風に愛し合って、抱き合って、身体で心で触れ合って
そうしていつか授かる命は何より尊いんやと思う。
2人が3人になって、4人になったり5人になったりしていっても
隣でずっと平次が笑ってくれてたらいい。


そんで、アタシも………。


幼なじみから恋人に
恋人から奥さんに
平次にとってのアタシがちょっとずつ存在を変えても 

いつやって、アホやなトロいな、しょーもないな、ほっとけへんなって
めんどくさそうに手をひいて頭を撫でて
でも絶対にその手を離すことなかった、そんな平次の隣で
可愛く優しく微笑んで平次を支えてる
そんな女でずっといたいよ。


それが、平次の腕に抱かれながら、最初の夜に誓うこと。

++++++++++

これがほんとの初夜ですね^^;
どこかで聞いた例のあのセリフ、私も使ってしまいました^^;
ちょっとどうかなぁという表現あったりしましたが…だ、大丈夫でしょうか…;
新婚一発目で赤ちゃん授かったかどうかは、ご想像にお任せしまして。
でも平次ってそのへんの生命力的なもの強そうだからすぐに出来ちゃいそうな…あわわすみませんー!!
(もう、もう、私ったらほんとに…!)

和葉ちゃんが、一生平次の隣で幸せそうに笑っててくれたら、もうそれでいいです(*^_^*)
結論はそれです。きれいにまとめました。

2014/10/08 UP

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