Time after teime

いらっしゃいませ

雪の降る日に

「なぁ平次、雪…降ってきたな」
「そうやね」
「けど平次の背中あったかいから、全然寒ないわ」
「オレも…お前おぶっていい運動になっとるで、なんや、暑いわ」
「恥ずかしない…?」
「まぁ…あんま人通らんからなぁ。たまにすれ違う人にはじろじろ見られとるけど」
「あたしは半分意識がないから恥ずかしないよ」
「そうやろな…」


今日は、さっきまで、大学の友達の誕生日を祝っとってん。
ちょっとお酒飲んだらえらい気分よくなってしまって、
一人で立つとふらふら~って、
そんなあたしを心配した友達が、送ってくれようとしてたんやけど、
あたしが平次、平次、言うとったから、平次を呼んでくれたんやって…。

そんで、今、平次の背中におるん。


「迷惑かけて悪かったな。
ほんましょーもないやろこいつは。自分主役なわけやないのにな」
「噂の名探偵さんだ!大阪で有名だったんだよね」
「和葉ちゃん、彼氏にベタ惚れなんだねって話してたんだよ」

うっすら意識の中で、そんな会話が聞こえてた…。


「なぁ、中学の頃にもあったな…こうして平次におぶってもらったん…」
「あぁ、スキーの合宿んときな。お前が見栄はって足挫いた…」
「見栄やないって…。
平次とおんなじ上級者班で滑りたかったから…」
「あんときから、お前はオレにベタ惚れか」

「…けど、平次は、あんときはあたしのこと、好きやなかったよな…?」
「…さぁ…
どうやったかな…」

どうやった、って…。
自分のことやのに。

まぁええか…。ちょっとだけ、声のトーンが優しいような気がする。

そう、あたしは、ずっとずっと好きやったよ。
あのときも、あんたの背中でドキドキしとったん…。

あんたは張り切って事件解いて、でもどこかの中学生に負けた…とかなんとか言うて、
あたしのそんな気持ちに気づきもせんかったろうけど。


背中越しじゃ、心臓、ドキドキ鳴るんは
聞こえへんかな、やっぱり。


この状況は嬉しいけど、
平次の顔が見えんのが、ちょっと、残念やな…。


「なぁ平次、雪、降ってきたな…」
「あぁ。それさっきも言うたで」
「今度また、スキー連れて行ってや」
「お前滑れんやん」
「教えてくれたらええやん…」
「リフトの乗り降りから、な」


タクシー、呼んでくれたらよかったのに、
なんで平次、あたしをおぶって帰ってくれとるんやろ。
まぁ…タクシー呼ぶような距離でもないからかな。


「なぁ平次…」
「今度はなんや?雪の話なら、三回目になるけど」
「昔な、お父ちゃんにもよくおんぶしてもらっとった…。
それ、思い出した…」
「お父ちゃんて…。
ええわ、ええわ、お前が望むなら時には父親にでもなったるで」
「こんなお父ちゃん嫌や…」
「こんな、ってなんやねん」

「雪、降ってるな…」
「………そうやな…」
「寒いし、今日は一緒に寝ような…」
「オレは酔っとる女に手出す趣味ないで」
「誰も、えっちしようとは言うてへん…」
「…………。
ほんなら、和葉ちゃんがねんねするまで、子守唄でも歌ってあげましょーかね」
「なんやそれ…お父ちゃんみたいやな…」
「お前の親父歌わんやろ。
…ちゅーかそれも話戻るわな」
「はは」

さっきからそんなにあたし、おんなじことばっかり言うとるかな…。

平次の声聞きたいから、なんでもいいから、話しかけたくなるん。

 

「和葉」
「なに…?」
「お前、いつまで経っても危なっかしーな。
ほんまトロいし、知らん人に付いて行ったりしそうやな」
「付いて行くわけないやん。変な人に会うても、ちゃんと合気でやっつけれるし大丈夫や」

「父親やないけど…。
オレ、お前のこと、心配で心配でしゃーないわ。
頼むからオレの目の届くところにおってくれや」

急に…なに言い出すん、平次は…。


「あたし、ずっと、平次の近くにおるよ…」


ここからは、見えんのやけど、
今平次どんな顔してんのかな…?

 

雪が降っとるのに、寒くないのはなんでやろ?
お酒、飲んだからかな。


…違う、か。

「雪降ってるな」って、何回言うても
「そうやな」って優しく答えてくれる

恋しい人の背中におるからやろうな。


「なぁ、平次…」
「和葉、雪、やみそうやで」
「……そうやね。
けど寒いから、一緒に寝ような…」
「さっき寒ない言うとったくせに」


やから、それは、
あんたの背中におる間だけの話やって。

 

++++++++++

大学生・恋人設定で。
私はこの二人を絶対に離れさせたくないという願望があるので、
私の創作では高3でくっついて、大学は一緒に東京に行くという設定になっています。

2014/02/22 UP

inserted by FC2 system