「なぁ蘭ちゃん、教えてーや」
「いや、それはちょっと…」
「そんなすごいことするんか?工藤くんは…」
「もー、和葉ちゃんてば。そんなんじゃないって!
こんなところで話せないし…」
「そ、そうやな…。けどゆっくり蘭ちゃんと話す機会なかったんやもん…。
ほな、また二人きりになったときにゆっくりな」
**********
「おい、姉ちゃん赤い顔しとったけど、お前らなに話しとったん?」
東京に行った帰りの新幹線。
隣でなんや、にやついとる和葉に声をかける。
帰りがけ、駅のホームで和葉との会話で顔赤くしてた姉ちゃんが気になってしまって…。
こいつ、なにをへんなこと言いよったん、て。
「え…それは言えへんよ」
「なんでや。そんなマズイ話なんか?」
「平次聞いたら怒ると思うし…」
「あ?怒るような話か?
余計気になるで。話し」
「………」
「はよせぇ」
オレが怒るような話ってなんやねん。
お前も顔、赤なってきたけど。
「工藤くんな…」
「あ?工藤がどないしてん」
「せやから…
工藤くん、蘭ちゃんと一緒に寝るときどんななんかな?って。
そんな話、しとってん」
「…はぁ!?」
「ほら、平次怒っとるやん」
「怒ってへん!
…お前、それ聞いてどうするん?」
「別にどうもせーへんよ。
ただな、平次と工藤くんて全然タイプ違うやんか、そういうときも違うんかな、って気になったん」
なんやて…?
こいつ…ほんまにアホちゃうか?
「それにな…、ほら、あたしは平次しか知らんから、ほかの人はどうなんかな…ってちょっと、ほんまにちょっとだけ、思ったりしてな…」
おいおいおいおい
ちょっと待てや。
なんでほかの男が気になるん。
「平次…やっぱり怒っとるやん…」
「……」
「ちょ…なんかしゃべってや…」
「なぁ…お前、ちょっと逆の立場で考えてみぃ」
「え?」
「オレが工藤に、『お前ねーちゃんとやるときどんな感じなん?ねーちゃんどんな色っぽい声だしよる?』とか聞いてな、想像しとったらどう思う?」
「ちょっとあんた…ここ新幹線中やで?やるとか声だすとか言わんでや」
「突っ込むところそこちゃうやろ!」
そもそも誰やねん、駅のホームでそんな話をしとったんは!
「別に…工藤くんを想像しようと思ったわけやないもん。
ガールズトークの話題のひとつやで」
ガールズトーク?
そんな話すんなや。
女ってのはおそろしすぎるで。
「はぁ…」
「へぇじ~ごめんて…」
「…」
「オレかてな…」
「え?」
「オレやってお前しか知らへんねん。
せやけどほかの女がどうとか全く気にならんわ」
「え…」
「それになぁ…そないなことべらっべら話されて工藤の耳に入るとかほんまに勘弁してくれや」
「あ、あたしはそんなべらべら話したりせーへんよ。は…恥ずかしいやん」
「姉ちゃんからだけ聞くんか!」
「やから~、結局教えてくれへんかったって」
あたりまえやわ!
「……」
あぁ、オレがさっきから明らかに不機嫌になっとるから、
和葉も下向いたまましゃべらんようになってまった。
まぁ、少しは反省せーやほんまに。
「…けど平次だって、蘭ちゃんはともかく工藤くんがそういうときどないな感じかはちょっと気になったりするやろ?」
あ?
「アホか!気になるかいな、気色悪い」
「男同士は話したりせーへんの?
あぁ蘭ちゃんはかわええやろうな」
「想像すんなや」
「し、してへんわ!」
「なに話されるか思ったらこわなってきたわ。
もうオレしばらくせーへんわ」
「え…えぇ~!」
「…」
「ちょっと…そんなんさみしいやんか…」
「…」
「あたしすぐにちゅうしたりぎゅうしたりしたなって、あんたにくっついてくで。
そんでも我慢できるん?」
「…」
「それもあかんやったらもう近づいたりせんよ…」
…その上目遣いは計算なんか?
自然にやっとるんやったら、それこそおそろしい女やで、お前。
「なぁ平次ぃ~…」
「さっきからごちゃごちゃうるさいんじゃボケ!!我慢なんできるか!!」
………しまった。
新幹線の中やった…。
なんでこいつはいつもいつも
オレを振り回すねん!
ふと、和葉のほう見たら…
えらい笑顔でこっちのほう見てきよる。
な、なんやねん………。
女っちゅーんはほんまに…。
いや、オレはほかの女のことはわからんのやって。
オレを振り回すんはいつもいつも
和葉だけなんやけど。
「オレもう寝るわ。起こすなや」
「え~、平次寝てまうん?つまらんやん~かまってや~」
あかんあかん、
そんなかわええ顔でかわええ声出しても。
寝るって決めたら寝るんや、オレは。
「なぁ平次ぃ~」
「……うるさいな
夜に備えとるんや。お前も寝とけ」
「えっ!?
夜、なにするん…?」
わかっとるくせに、いちいち聞くなや。
++++++++++