Time after teime

いらっしゃいませ

恋人同士になれた日の夜

えっと…。
なに、話したらええんやろか…。

今日あたしと平次は東京に行っとって、さっき大阪に着いて、
今、駅からあたしんちまでの道のりを、歩いているんやけど、
さっきから平次も黙ってるし、なんだか気まずいわ…。


触れたら
気持ちが、伝わってしまう気がして

わざとってわけではないんやけど、

いつも平次の半歩くらい
後ろを歩いてた。


どうしたら、いつまでも一緒におれるんやろうって、
ずっと考えてた。

恋人になりたいと願ってしまったら、
それが叶わなくなりそうで、

あたしはこのまま幼馴染みって距離を保つことが
いちばんいいような気もしてたん。

その関係が、一歩…いや、何歩か前進した今、あたしはなんだか戸惑ってしまってる。

照れくさいとか恥ずかしいとか、そんな感情なんかな…。

ろくに会話もできんまま、あたしの家に着いてしまった。


「着いたで」
「う、うん…」
「ほな、また明日…」
「うん、明日…。
って、明日休みやけど、どこか行くんやったっけ?」
「あー…行かんでもええけど…来るやろ?うちには」
「うん、行く…」

「…ちゅーか…別に、今までと変わらんやろ」
「うん、そうやね…」
「なんかなー、緊張しとるん?調子狂うんやけど」
「え、別にしてへんよ!
今さらあんたに緊張なんするわけないやん!!」
「そうそう、それや。それでこそオレの和葉や」

え?

「今オレの和葉って…」
「あ?そんなこと言うたか?」
「言ったやん!今やで!」
「…別に間違ってへんやん」
「え…あ…そう…」

そういえばさっきも言うてくれたな…そんなようなこと。

あんたそんな恥ずかしい台詞、さらっと言える男やったん…?


「また、明日な」

そう言って、平次の手があたしの前髪をかきわける。

そのまま、笑顔でさよならをした。

 

触れたら
気持ちが、伝わってしまう気がして

今まで半歩くらい後ろを歩いてたあたしに

平次はずっと一緒におっていいって、言うてくれた。

 

なぁ平次、


あんたがいる限り、
あたしの願いはずっとずっと続くんよ。


「平次…!」
笑ってさよならしてまだ間もないのに、遠くなる背中がなんだか寂しくて、呼び止めてしまった。

そのままなんも言わんと、平次はあたしの前まで戻ってきてくれた。

「なんや?」

「あたしたち、ずっと一緒におったやん…」
「あ?あぁ、そうやね」
「これからもずっと一緒なんやね…」
「そうや。今までと変わらん、て言うたところやん」

ごめん…呼び止めてまで言うことやなかったよね…。

 

幼馴染みのままでも、あたしはずっと幸せやったよ。

今までただの幼馴染みのあたしを、平次はいつも守ってくれてた。

あたしのために怪我して危ない目に遭うて、一緒に死にそうになったこともあったな。
平次は一度だって、あたしを責めたりはせんかった。


ほんまはあたしの願いは、ずっとずっと前から叶えられとったんやないかな…。

 

今日からは、ただの幼馴染みじゃないんやね。
あたしはこれから、今まで平次にもらった幸せ、ちゃんと返していけるかな。


「いつまでそうしてるん?」
「え…」
無意識のうちに、あたしの右手は平次の服の裾、掴んどった。

「そんなにオレと離れたくないんかー!かわええなぁ、和葉ちゃんは!」
「そ、そんなんちゃうわ!!」

ここで可愛らしく「そうや」って答えられないところが、やっぱりあたしなんやなぁ。


「今度こそ帰るでな。おやすみ」
「うん、おやすみ…」


明日、また、会えるんやもんね。


去っていく、平次の後ろ姿を見送りながら…

あたしは、世界一かもしれへんくらい、幸せ気分に浸ってしまった。

 

『こんな日が、ほんまに来るとはな…。』

 

空、見上げたら、星がいっぱいキラキラしとった。

今日はやっぱり、特別なん。


大好きな幼馴染みが、大好きな恋人になった日やもん。

 

++++++++++

タイトルからしてあれなんですが…こっぱずかしい感じになってしまいました^^;
和葉ちゃん、なんとなくいつも平次のちょっとうしろ歩いてるイメージだけど、そんなことないかなぁ?

2013/10/23 UP

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