「はよ、言うてや…待ってるから」
…………。
ちょ…あかんて。
言われへんて。
さっき機嫌を損ねてしまった目の前の女が、
やっと口をきいてくれた思うたら、
「アタシのことどう思ってるか聞かせてや」
なんて突然言いよって、
オレは今、どうしたらいいかわからん。
どう思ってるか?
そんなん言わんでもわかっとるやろ。
女っちゅーんは時々ちゃんとした言葉を欲しがるもんなんやろか。
たった二文字やで。
一瞬で終わる。
けど言えへん。
五文字のほうはどうかて?
もっと無理やわ。
だいたいオレはそういうんは苦手なんや。
そんくらいわかれや、ずっと一緒におるやろ。
「平次はやっぱりアタシのことなん、なんとも思ってないんやね。
アタシばっかり好き好き言うて、アホみたいやわ」
アホ!
そうや、お前はほんまアホやわ。
なんでそうなるん。
あーもうほんまに、わからん。
こいつがどうして欲しいかとか、
なにを求めとるかとか、
考えても考えても、
わからんのや、正確には。
殺人事件の犯人暴くほうが、簡単やで、
オレには。
せやから、
オレの、したいようにするで。
これで伝わらんかったら、お前はほんまにどうしようもないアホや。
「もう、ええわ。
平次なんか知ら…
…ちょ、なにするん」
なにする、やないわ。
こっちのが早い思うたから、抱き締めとるんや、今、お前を。
「ちょっと平次…
痛い…苦しいて」
「うるさいわ、お前は
ちょー黙っとき」
「す、好きでもない女にこんなことせんといてや」
「好きでもない女にこんなことするって、どんな最低な男や思われとるねんオレは」
「だって平次言うてくれへんやん…」
「言う必要なんかないからや!」
「なんやそれ、必要ないなんてひどない?」
あーもう、ほんまにうるさいな、こいつは。
そんな口、塞いだるわ。
抱き締めとる腕はそのままに、
オレは、和葉がこれ以上余計なこと考える余裕なんてないくらい、
深くて長いキスをした。
「へ…いじ…
このままするんか…?」
「あ? あぁそうやね
スイッチ入ったで」
「ほんならその前に、聞かせてくれてもいいやん」
「アホ!
そんなん言葉で表せられん分も、今から伝えたるで
覚悟しとき!」
日本語の、二文字でも五文字でも、伝えきれんもんがあんねん。
ちゃんと感じ取れや、
オレの腕の中で。
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