Time after teime

いらっしゃいませ

可愛い痴話喧嘩

「あーもう、ほんまにお前はアホやな」
「アホアホ言わんといて!
あんたがアホ言うたびにほんまにアホになる気がするわ!」
「ほんまにアホなんやわ! なんであんなセールスに騙されるん?」
「騙されてへん! ちゃんと無料券もろたもん エステ1回分!」
「せやから、そっからぼったくられるゆーてんねん
そんなもん行くなや、意味ないで!」
「意味ないてなんなん!失礼やわ」

…また、始まった。
恒例の、アレが。


私と新一の少し前を歩く、服部くんと和葉ちゃんの、いつもの可愛い可愛い痴話喧嘩。

今日の喧嘩の原因は…えっと、なんだっけ?
和葉ちゃんが街で答えたエステのアンケート、お礼にもらった無料券使ってエステに行くかどうか…。

…どうでもいいことなんだよね。相変わらず。


「オイ蘭、なに笑ってんだよ」
「だって新一…」


ほんとに可笑しいんだもん。
本人たちは真剣なんだよね。
二人のこんなやりとりを見ているとハラハラもするけれど、なんだか微笑ましくなってしまったりもするんだ。

新一、気づいてないのかな?
本人たちも…気づいてないのかも?


「あーもう、平次なんかほんまに知らんわ!
アタシがキレイになるのが気にくわんのやろ?
他の男に取られたらどないしよーって、
妬いとるなら妬いとる言うたらええやん」
「な…なに言うとるん!
誰が妬くかお前なんかに!
お前がオレにべた惚れやで一緒におってやっとんのじゃ
別にいつでもどこでも好きなところ行ったらえーわ」
「なんやて!?
ほんならもっとかっこええ人見つけるわ!!
平次よりええ男なんこの世にぎょーさんいてるしな!!
工藤くんみたいな!!」

「え?」

和葉ちゃん…ここで新一の名前出しちゃうんだ…。
でも私、ごめんやっぱり顔のにやけが止まらないよ。


「工藤は姉ちゃんにべた惚れや
お前なんか相手にするか
なぁ、姉ちゃんもなにか言うたってや」
「え…あ、うんそうだね
和葉ちゃんには服部くんしかいないと思うよ」
「蘭ちゃん~…。
だからそうやのうて…。
もう平次なんか知らんて言うてるのに!」


「なぁ、あいつら大丈夫か?
ちょっと話がヤバイ方向に行ってないか?」

新一が私の耳元で、ちょっと困ったような顔で囁く。

ヤバイ方向って…別れ話ってこと?

大丈夫、それはないよ。
絶対に。


「ふふ」
「なんだ? なに笑ってんだよ?」
「新一、気づいてない?

あの二人…喧嘩してる間ずーーーっと手、繋いだままだって」

「え?」


私にそう言われて、新一も視線を向ける、その先には…

指と指を絡ませて、しっかり繋がれた二人の手。

 

「あいつら…バカか?」
「そうかも」
「離せばいいのに」
「もうあれが自然なんじゃない?」

 

探偵さんと幼馴染。
私と新一と似た状況の二人。
対抗心なんてもちろんないけれど、時々、
あんな風に私たちもなりたいな、なんて
思ってしまうこともあるよ。


喧嘩してる姿を見てそう思うなんて、少し変だけどね。


「ねぇ新一、私たちも手、繋ごうよ」
「え? あ、そうだな…
別にかまわねーけどよ…」

そっと、私の指に、新一が指を絡ませる。


「蘭ちゃーん! なにやっとるん?
早く行かんと店混んでしまうよ」
「お前らなにイチャついとるん
見てるこっちが恥ずかしいわ」


あれ…?
喧嘩、もう終わったんだ。
いつの間に?


「あー蘭ちゃんたち手繋いどる!
ラブラブやなー」

…え?

「…はは」

さすがに新一も、笑うしかないみたいだね。

そんな可愛い二人に負けないように、私も新一の手をぎゅうっと握った。

 

「喧嘩になっても、手、離さないでね」

 

++++++++++

蘭ちゃんモノローグです。

お題サイトより

【不器用なふたりで七題】
7.手を繋いだまま痴話喧嘩
Fortune Fate

これ見つけたとき、なんて可愛いお題なんだ!!と思いました。
手を繋いだまま喧嘩するなんて…あの二人ならありえそう!!と思って妄想膨らみました。
新一と蘭ちゃんも、手繋いだまま喧嘩してそうだけどv
 
2013/09/03 UP

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