「今度の土曜、久しぶりにどこか行こか」
「え、ほんま?忙しいんやないの?」
「大丈夫や」
「ほんま久しぶりやな、嬉しい」
最近も事件や推理や、って、平次はずっと忙しくしとったから、
一緒に出掛ける約束も久しぶりで…週末、待ち遠しくてたまらんよ。
ただの幼馴染から恋人になって…何回目のデートやろか?
ほんの数か月前。
やっと、友達のエリアはみ出せたんよ、アタシたち。
恋人になったゆーても、今までと、特になにも変わってない。
相変わらずアタシらはよう喧嘩するし、
アタシは平次の前で可愛げないこと言うたり、意地ばっか張ったり。
けど、素直になれるときもあるねん。
そういう自分が、アタシは好き。
平次と一緒にいるときの自分が、一番好きなんや。
待ちきれなかった週末。でも、ちゃんとその日はやってきた。
アタシらはいつもの場所で待ち合わせ。
んで、いつものように平次が少し遅れてきて、アタシがやいやい文句言うて、
そんな感じでデートが始まるんや。
昔からずっと、変わらん。
「和葉、どこ行きたい?」
「どないしよう…久しぶりやしな…
でもすぐ思いつかへんわ…」
平次と一緒なら、どこでもええわ。 なんて。
「なぁ、目的地決めんで走ってや。」
「お前、なにを無茶なこと言うとるん。西いくか東行くかもわからんで走るんか?」
「んなら、分かれ道があったらアタシが右とか左とか言うたるから」
「なんやそれ」
「楽しそうやん」
「帰れんくなっても知らんで」
「大丈夫やって」
そんなアタシの無茶ぶりを、文句いいながら聞いてくれる平次。
アタシ専用のメットをかぶり、平次の背中にしがみついて心も体も準備は万端やで!
いつでも、走り出してや。
「ほな、行くで」
「うん」
エンジンの音が響く。
アタシの鼓動も、素早く波を打つ。
アンタの肩に、腰に、背中に、なんて、何度も触れとるはずやのに、
毎回ドキドキすんねん。
伝わってしまったら、恥ずかしいなぁ。
平次がバイクのスピードを上げるたび、
アタシの心も加速度をつける。
アンタを、もっともっと好きになる。
「なぁ、アタシの存在、アンタの中で今どれくらい?」
「なんや?」
聞こえへん、て、わかってるけど…。
広い背中に問いかけてみる。
腰に回した手をぎゅうっと強める。
ほら、時々は、こんな風に素直に可愛いこともできるんやで。
そんな自分が、アタシは一番好き。
平次も同じこと、思うてくれるやろか?
そうやったら、嬉しいな。
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